2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

待ち合わせは、品川駅の新幹線乗り場前だった。さほど緊張もせず、私は乗り場前を少しうろついた。反対側の南口に黒髪で遠めでも「ああ、イケメンなんだろうな」と感じる人がいた。それが、彼との出会いだった。 暫く北口前で立っていると彼から連絡が来た。…

目の前の彼女はよく笑う女の子になっていた。入学式の頃とは大違いだ。全然笑わない子だった。

もっと冷たい人間になりたかった。愛なんて知らなきゃよかった。たまにそう思うことがある。この人にも大切な人がいるからとか、根はいい人だからとか、そう思っていないわけではないけれど、無意識に誰かを悪く思うのは良くないことだと思っていて、自分の…

彼女を一言で表すならば間違いなく「自由」だ。彼女は、私の十九年間と四ヵ月半の人生で唯一、「自由だ」と思った人だ。誰にも靡かず自分を確かに持っている彼女は、入学式の日、そう、彼女と私の人生という名の道が交わった日から、いつも背筋をすっと伸ば…

彼と子供はやっぱり女の子が欲しい、というような話をした。きっと彼は、娘をこれでもかというほどに甘やかすだろう。どろどろのチョコレート風呂に浸かり、マシュマロやイチゴにそのチョコレートをつけて食べるように。 彼は言った。 「朝は俺が娘を自転車…

彼は私に対してどこまでもやさしい。いつだったか、私が今の仕事を始めたばかりのころに体調を崩したことがあった。その仕事は自分に合っていると思っていたけれど、ストレスが溜まるとすぐ身体に出ると知っている私は少しショックだった。そんな私を見て彼…

静かな夜だった。私はひとりで、コーンフレークをざくざくと握り潰した。明日は彼に出会って初めてのバレンタインデーだ。だが彼はいない。二十三時の飛行機で、ヨーロッパにあるマルタ共和国へと向かった。その日、彼の気配は一切しなかった。今日を入れた…