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 「笑気ガス」。少しひんやりとする空気をすぅっと吸い込んだ。少しずつ頭がぼんやりとしてくる。歯科助手の女性が、私の歯茎の淵を器具でなぞる。そのガスを吸うと、痛みを感じなくなるらしい。

 

 くすんだブルーのマニキュアを爪に伸ばした。今の私。

 

 昨日は雨が降っていた。今朝もアスファルトは濡れたままだったが、雨の日特有のあの匂いはしなかった。「雨の日の匂いは、アスファルトと死んだ虫や残骸の匂いなんだ」と誰かが言っていた気がするが、それが事実かそうでないかはどうでもいい。雨がアスファルトに打ち付けられて、そこで何かしらの化学反応が起きてあの匂いが立ち込めるのだ、きっと。そうでなければ、水をアスファルトに零した時にあの匂いがしない理由を説明できないじゃないか。だからやっぱり、雨とアスファルト(と、もしかしたら残骸の)化学反応なのだろう。