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 もっと冷たい人間になりたかった。愛なんて知らなきゃよかった。たまにそう思うことがある。この人にも大切な人がいるからとか、根はいい人だからとか、そう思っていないわけではないけれど、無意識に誰かを悪く思うのは良くないことだと思っていて、自分の本当の感情を騙すようなことをしている。もうほとんど癖のようなもので、本当の感情がどこにあるのか私ももうよくわからない。誰かを傷つけるのは嫌だと思うけれど、自分の感情を隠して「良いこと」を言うことで私の心は少しずつ擦り減っていく。

 本当の私はどこにいるのだろう。本当はどこにもいないのかもしれない。「世界五分前仮説」のように、世界は五分前に作られたのかもしれないし、「水槽の脳」のように、私の体はどこにもなくて、脳だけが水槽の中に浮かんでいるのかもしれない。私が感じているこのキーボードの感触も、すべて脳がなければ感じることは出来ないのだから、体がないと言われてもおかしくはないのだ。